牡蠣(カキ)のノロウイルス感染による胃腸炎

主にノロウイルスやロタウイルス、アデノウイルスをはじめとするウイルス、細菌などによって引き起こされる胃腸炎を「感染性胃腸炎」といいます。なかでも毎年11月から12月にかけて流行するのが、ノロウイルスによる感染性胃腸炎です。

生のカキ料理による食中毒

ノロウイルスは感染力が極めて強いため、10~100個というごく少数でも感染が成立するのが特徴です。アメリカでは年間2300万人が感染されてるとされており、日本でも保育所や小学校、老人ホームなどで毎年のように集団感染がおこっています。

ノロウイルス胃腸炎の症状は、1日数回から十数回にも及ぶ嘔吐と下痢です。小さい子供や高齢者は下痢や嘔吐で水分が失われる「脱水症状」を起こしやすく、重症化する恐れがあります。医療機関を受診するまでの脱水対策としては、吸収率の高い経口補水液が便利です。ドラッグストアでも購入が可能ですが、水1リットルに対して、スプーンで6杯の砂糖、1杯の塩を加えることで自家製の経口補水液を作るのもよいでしょう。下痢止めは体外への菌の排出を送らせて、症状が逆に悪化することもあるので、医師の指示なしに服用することは止めましょう。

ノロウイルスに対する特効薬やワクチンは存在しないため、脱水症状に対する対処療法を行い、数日間安静にして自然治癒を待つしかありません。症状が治まった後も、10日から1か月間は便からウイルスが検出され続けるケースもあるので、乳幼児のオムツ交換の際に便に触れたり、嘔吐物の処理で直接触れたりすることによる二次感染に注意しましょう。

ノロウイルス胃腸炎は、汚染された二枚貝(カキなど)を生あるいは十分に加熱しないで食べることによる「食中毒」として発生することもあります。汚染されたカキなどに触れた手で、食器やほかの食品に触れて集団食中毒が発生することもしばしばなので、カキが美味しい冬は抵抗力の弱い老人や子供がいる家庭では注意が必要です。

厚生労働省が公表している「食中毒発生状況(2013年)」によると、1年間の食中毒の事件数の約35%、患者数の約61%はノロウイルスによるものとなっています。

ノロウイルスは、他のウイルスと同様に熱に弱い性質があります。カキなどの感染リスクがある食品は、中心部を85℃から90℃で90秒以上加熱して食べると安心です。嘔吐物があった場所は、次亜塩素酸ナトリウム溶液を含ませた布やペーパータオルで拭くようにしましょう。下痢がある場合、トイレ後の手洗いでドアのノブや水洗レバー、水道の蛇口などに触れる際は、トイレットペーパーを触れた手と反対側の手で触るようにしましょう。呪う椅子はアルコールにも強いため、石鹸で手洗いを念入りに行うことも大切です。

幼児や高齢者は要注意!食中毒の原因菌

サルモネラ感染症
鶏や牛などの家畜、ペットや野生動物などの糞に含まれているサルモネラ属菌が飲食物に付いて、それを口にすることで感染します。鶏卵の汚染が原因となることが多いため、私たちがスーパーなどで購入する卵は表面を洗浄してから流通されています。

サルモネラ菌

ただし卵の表面だけでなく内側にもサルモネラ菌がいることがあるので、感染を完全にシャットアウトすることはできません。汚染されている卵の割合は数千から数万個に1個程度です。仮に汚染された卵を生で食べてしまったとしても、消費期限内であれば健康な人は免疫の働きによって、下痢や嘔吐、腹痛などの症状が出ることはありません。しかし、免疫が弱い高齢者や乳幼児は、重症化してけいれんや意識障害などが現れる危険性があるため、生卵は加熱して食べた方が安心です。

万が一、サルモネラ感染症に罹った場合は、水分補給をしっかり行って脱水症状を予防しましょう。むやみに下痢止めを使用すると、菌を体内に残存させて症状を悪化させたり、腸閉塞の原因になることもあるので、医師の指示なしに使用しないようにしましょう。

腸管出血性大腸菌感染症
  0(オー)157や0111などに代表される腸管出血性大腸菌による感染症は、大きな食中毒を起こしてきた歴史があるため、一般の方にも広くその名が知られています。結構前の話ですが、O157の食中毒でカイワレ大根が感染源として疑われて風評被害が相次いだ時に、菅厚生相(当時)がカメラの前でカイワレ大根を頬張り、安全性をアピールしたことを覚えている方も多いかと思います。

O157は牛の腸内に生息しており、牛の糞で汚染された野菜などを食べることで感染します。現在でも毎年最大で4000人程度の感染者が報告されています。感染力が非常に強いため、学校保健安全法によって医師がOKするまでは学校は出席が認められません。

O157に感染すると、3~5日程度の潜伏期の後に下痢と腹痛が現れます。下痢は血便なのが最大の特徴で、重症化すると真っ赤な血が肛門から出てきます。

カンピロバクター感染症
カンピロバクターは鶏や牛の腸に存在しており、食中毒としては鶏肉が感染源となることが多いので、家庭内での食中毒として注意が必要な細菌です。感染すると、水様の下痢、嘔吐、発熱があり、便には血が混じることもあります。

カンピロバクターは空気に触れると死滅しますが、冷蔵庫のような低温環境では長期間生き続けることができます。わずかな菌でも感染が成立しますが、十分な加熱を行えば予防は難しくありません。

免疫が弱い乳幼児は発症しやすく、脱水を起こして重傷化することもあるので、こまめな水分補給に努めましょう。

ウェルシュ菌感染症
食肉や魚介類に付着しているウェルシュ菌に感染して起こる食中毒で、大量の調理を行う給食や飲食店でしばしば発生します。この菌は「芽胞」と呼ばれる増殖しない状態になると、煮沸にも耐えうるため、加熱したスープやカレーが原因で食中毒を起こすることがあります。

感染すると8~20時間ほどの潜伏期間の後、腹痛と下痢が起こります。食中毒の中では症状は比較的軽い部類に入り、1~2日もすれば自然治癒します。下痢による脱水症状だけ気を付けていれば、さほど心配いりません。

酸素がないとウェルシュ菌は、増殖型となってエンテロトキシンと呼ばれる毒素を作り出します。加熱した食品であっても37℃前後にまで下がると増殖するため、加熱した料理は早めに食べ、保存する際には室温を避けて冷凍保存することが大切です。

腸炎ビブリオ感染症
7月から9月にかけて発生件数が増加する食中毒です。海水温度が15℃位になる夏になると、海水中で腸炎ビブリオ菌の活動が増殖して、魚介類に付着します。そのため魚介類とその加工品が原因となることがほとんどです。料理したまな板を通じて、ほかの食品に菌が付着することもあります。菌は熱に弱いため、加熱すれば死滅します。

腸炎ビブリオに感染すると、下痢、嘔吐、腹痛、嘔吐が現れます。長くても1週間もすれば自然治癒しますが、腸炎ビブリオが作る毒素で循環器に障害が出ることもあり、油断は禁物です。

食後の胃の不快感はピロリ菌が原因かも

従来、胃炎や胃潰瘍の主な原因は塩分の多い食事やストレスと考えられてきました。その背景には人間の胃は強い酸が分泌されているため、強酸性に保たれており、病気を引き起こす細菌が生息するのは不可能と考えられていたという事情がありました。

食後の胃の不快感

しかし、ウォーレンとマーシャルという二人の医師は、胃の中に螺旋型の細菌、すなわち「ピロリ菌」が住んでおり、これが胃炎や胃潰瘍の原因であることを突き止めたことで従来の主張は大きく変わりました。ピロリ菌は、尿素を分化してアンモニアをつくるウレアーゼという酵素を生成しますが、こののアンモニアが胃の中の塩酸を中和することで、強酸性の環境の中でも生きていけるのです。

ピロリ菌の発見者の一人であるマーシャルは実際にピロリ菌を飲んでみて、自身の胃に炎症が起きることを証明しました。当初は特殊内縁の一つの原因に過ぎないと正当な評価が与えられなかった二人の研究でしたが、ピロリ菌の感染こそが胃潰瘍の最大の元凶であることがわかり、2005年のノーベル医学賞を受賞しました。

ピロリ菌が胃潰瘍の最大のリスクファクターとなることを発見したことが、どうしてノーベル医学賞を受賞するほどの偉大な成果であるかというと、原因が細菌ならば抗生物質の開発により胃潰瘍を簡単に治療できるようになるからです。

従来、重症の胃炎や胃潰瘍の患者さんには外科手術を行うことも少なくありませんでしたが、現在では抗生物質(アモキシシリン、クラリスロマイシン)を組み合わせたうえで、胃酸の分泌を抑制する薬と服用するだけで高い治療効果をあげられるようになりました。手術は心身の大きな負担をかけますが、抗生物質の服用はそんな心配もなく、胃潰瘍患者の80%以上は抗生物質の服用で治癒しています。

ピロリ菌は十二指腸潰瘍の大きな原因となることも研究によってわかってきました。さらに大規模な調査研究などによって、ピロリ菌は胃がんの発症にも深い関係があることが判明しました。国立がんセンターの津金昌一郎博士らの研究では、ピロリ菌に感染していると、感染していない人に比べて胃がんのリスクは5倍上昇することがわかっています。

ピロリ菌の感染=胃潰瘍や胃がんになるというわけではありません。実際にピロリ菌に長年感染していても、消化器の病気とは無縁に一生涯を過ごす人も大勢います。しかしピロリ菌に感染している人の方か、明らかに胃潰瘍や胃がんになるリスクが高いことがわかっています。

従来はピロリ菌の除菌は保険適応のハードルが高かったのですが、現在では胸焼け、胃の不快感などの症状が長引く慢性胃炎と診断された患者さんでも保険で除菌が可能になりました。除菌に使用する抗生物質は下痢などの副作用がありますが、完全に飲み切れば、90%以上の人ピロリ菌を完全に除菌することができるとされています。

骨粗鬆症はカルシウム不足が原因

骨の老化は更年期以降の全ての女性に起こります。女性ホルモンのエストロゲンの低下によって骨量が減少し、骨がスカスカになります。これが進行すると、骨粗鬆症になります。

毎日の食事でカルシウムを摂取

骨は、毎日入れ替わっています。古くなった骨は壊され、そこに新しい骨がつくられています。この骨の破壊と再生のバランスがとれていれば、骨量は変わらず健康な状態を維持できます。しかし、このバランスが崩れて骨の破壊(骨吸収)に再生が追い付かないと、骨量が減少していきます。

エストロゲンはこの骨の代謝に深く関係しており、骨吸収を抑制して骨密度を高める働きがあります。また近年、エストロゲンが骨を壊す細胞の自然死を促し、その数や寿命を調整していることもわかってきました。

更年期以降の女性は、そのエストロゲンが急激に減少してしまうので、骨の破壊が急激に進み、骨がもろくなってしまうのです。骨量が急速に減少するのは、閉経周辺期から8年くらいです。その後は、加齢によって引き続き緩やかに減少していきます。エストロゲンの影響を受けない男性は、骨量の急激な低下はなく、骨粗鬆症になる人は女性の5分の1程度です。したがって、骨粗鬆症は更年期以降の女性に特有の病気と言えます。

骨粗鬆症で最も注意が必要なのは、転倒です。転んだ時に、手やお尻をついて、骨折してしまうのです。骨折しやすいのは、腕の付け根、足の付け根、手首などです。また、背骨も骨折しやすく、胸椎や腰椎の変形や圧迫骨折などにより、背骨がだんだん曲がってきて、背も小さくなってきます。

骨折の場所で一番怖いのは、足の付け根(大腿部頸部)の骨折です。手術後のリハビリがうまくいかないと、そのまま歩けなくなり、寝たきりに繋がってしまいます。脚の付け根の骨折は、寝たきりの原因として、脳血管障害(脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血)に次いで多くなっています。

骨粗鬆症の予防は、成人を迎えるまでに十分な量のカルシウムを摂取し、運動をしてピーク時の骨の量(=ピークボーンマス)を高くしておくことです。そして、急激に骨量が減少する閉経周辺期もカルシウムを採って積極的に運動することです。この時期のHRT(ホルモン補充療法)も有効で、急激な骨密度の低下を食い止めて、その後の骨折を予防する効果があるとされています。

ローターブレーダーによる心血管治療

心臓病は、がんに次いで日本人の死因の第2位となっており、増加傾向にあります。時に心臓病により突然死が生じますが、突然死を招く原因の多くは、心臓の血管である冠動脈が突然完全に詰まってしまう心筋梗塞です。その前段階である狭心症では冠動脈が完全に詰まってしまわないものの、コレステロールの血管への沈着により動脈硬化が生じ、その結果、冠動脈が狭くなる狭窄状態となります。

心臓の解剖図
従来は薬剤内服による治療か、全身麻痺や開胸を必要とする冠動脈バイパス手術の二つしか選択肢がありませんでしたが、1980年代になると局所麻酔のみで行う、体に優しい心臓カテーテル治療(PCI)が急速に普及するようになりました。

当初はバルーンによる狭窄部分の拡張が主流でしたが、まもなく金属のメッシュの管であるステントが導入され、7年前からは再狭窄率をさらに減少させる薬剤溶出液ステントも普及するようになり、PCIが狭心症や心筋梗塞と言った冠動脈疾患に対する治療の主流を占めるようになりました。

しかし、動脈硬化が顕著で石のように固くなった重症石灰化病変に対しては、バルーンやステントによる十分な通貨、拡張が極めて困難です。そこで1990年代の後半に登場したのが、ダイヤモンドのドリルを高速に回転させながら前身、後退を繰り返し、病変を貫通させるローターブレーダーです。

ローターブレーダーは、削られた石灰化病変の粒子を末梢に詰まらせることなく、固くなった狭窄部位を効果的に削り、その後のバルーン、ステントによる拡張を十分効果のあるものにすることができます。

ただし、劇的な治療効果を有するものの、ローターブレーダーには熟練したカテーテル操作技術が必要であり、通常のPCIよりリスクが高いとされています。したがって、心臓血管外科の24時間体制、年間のPCI件数など、厚生労働省が策定した高水準の治療体制が整っている医療機関においてのみ、施行することができます。